第1章:終わりの始まり

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「……で、あるからして、くれぐれも最後の最後に気を抜く事の無いように、残りの学生生活に望んで頂きたい。以上」 「……どうして朝礼の話って、こんなに長いんだ?」 俺は眠気を堪えながら、先生に注意されない様に前を向いて、話を聞いている振りをする。 「でも、そんなのどこ行っても変わらないだろうからな。学生が皆通る試練だと思っていればいいさ」 隣から、友人の真成 英雄(シンジョウ ヒデオ)がそう言ってくる。 「ま、そっか」 「続きまして、生徒指導部より話があります」 「……はあ」 俺はため息をつき、話に耳を傾ける振りを続けるのだった。 …… 「あ~、疲れた」 教室に帰ってきて間もなく、俺は机に突っ伏した。 「毎度毎度同じ様な話をして、よくもまあ飽きないもんだね」 「そう言うなよ、向こうだって考える所があってああいう話をしてるんだからさ」 「って言ってもなあ……」 「ふふ、幸生くんは相変わらずだね」 そんな話をしていると、学園のアイドルである花原 美好(カハラ ミズキ)が声をかけて来る。 「相変わらずって、そんな風に言う程会って無くないだろう?」 「まあ、それはそうだけどね」 「けっ、お2人とも相変わらずの様で」 2人で話していると、ヒデがそう野次を飛ばしてくる。 「しっかし、いまだに信じられないよな~。 学園のアイドル花原 美好が、コウみたいな普通の男と付き合ってるなんて」 「何か引っかかる言い方だな、それ」 まあそれは置いといて。ヒデの言う通り、俺と美好は少し前から恋愛関係にある。 ある事件がきっかけなのだが、おかげで現在は学校中が知る有名カップルだ。 「真成くん、その言い方は無いと思うな。 あなたが知らないだけで、幸生くんはとってもいい人なんだから」 「はいはい、のろけはもうお腹いっぱいですよ~」 ヒデが自分の腹をさする動作をして、美好を茶化す。 「ま、後は若い者同士って事で。 俺は同じく寂しい思いをしている同志と、呪いの言葉でも呟いてますよ」 皮肉めいた口調でそう言うと、ヒデは男友達の方へと去って行った。 「……あっちは本当に相変わらずみたいね」 「まあいいじゃないか。 そのおかげで、こうして2人で話せるんだからさ」 「ふふ、それもそうね」 美好はそう応えると微笑みを浮かべ、話を続ける。
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