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「ところで、卒業パーティーの事について話がしたいんだけど」
「ああ、そう言えばそろそろ取り組まないとまずいな」
俺たちももう3年生、卒業について意識しなければならない時だ。
とは言っても、ここは就職希望の者が集まる学校なので、この時期にはほとんどの生徒の進路が決定している。
「俺は芸能界でマネージャーに。でもって美好は、高校卒業と同時にアイドル歌手デビューか」
「うん、だから今やる事と言ったら、卒業パーティーの出し物を考える位なんだよ」
「生徒全員、何かしらやんなくちゃいけないんだもんな」
「そうだよ、だから頑張って考えなくちゃ」
軽く拳を握って、美好がそれにかける意気を伝えてくる。
「って言ってもなあ、これと言ってやりたい事も無いし。
美好は何か考えてないのか?」
「ふふ、その質問を待っていたんだよ」
「と言うと?」
「実はね、卒業パーティーに私が入る事務所の人も招待してあるんだ。
だからそこで歌を歌って、私の実力がどれ位の物か、改めて見てもらおうと思って」
「なるほど、デビュー前のデモンストレーションって訳ね。
それいいかもな、学園のアイドルで本物のアイドルになる美好の歌声が聴けるなんて、うちの生徒にとってもこれ以上ないイベントだ」
「ありがとう。
それでね、幸生くんに是非、そのプロデュースをしてもらいたいの」
「プロデュース?」
「そ。それでもし成功すれば同じ事務所に、上手くいけば幸生くんが私のマネージャーになるかもしれないじゃない?
そうすれば、卒業してもずっと一緒にいられるかなって」
「なるほど、それは名案だな。って言うのもちょっと照れるが」
「えへへっ」
「ま、でもそういう事なら。
美好のプロデュース、喜んで引き受けさせてもらうよ」
「ありがとう、嬉しいよ」
こうして、俺の卒業パーティーに向けての仕事はあっさり決まった。
「あ、そうだ。
ちょっとここで待っててくれな」
「え?
うん、わかった」
俺は美好との話を一旦打ち切り、少し席の離れている女生徒に声をかける。
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