第1章:終わりの始まり

4/12
前へ
/61ページ
次へ
「おい夢、お前は卒業パーティーの出し物何にするか、決まってるのか?」 「えっ? あ、う、うん、友達に誘われたから……」 「そうか、なら良かった」 後半の方は声が消え入りそうだったので良く聞き取れなかったが、まあ悪い事は言ってないだろう。 こいつは天唐 夢(アマカラ ユメ)。家が隣同士の、要するに俺の幼馴染で、少し内気な性格故に、こういうイベントに積極的に参加できないものと思っていたから、ちょっとほっとした。 「ま、それじゃあ頑張れよ」 「あ、うん、幸生も……」 俺は再び美好のところに戻り、HRが始まるまで話を続けた。 …… 「……はい、それじゃあ今日はここまで、号令をかけて」 「起立、礼」 学級委員の号令で、3学期初日の授業が終わった。 「幸生くん」 そして早速、美好が話しかけて来る。 「一緒に帰ろうよ。 パーティーの具体的な打ち合わせもしたいし」 「ああ、そうだな」 俺はそう返事をして帰り支度を整えると、いつも通り美好と一緒に教室を出た。 …… 「ねえ、さっき天唐さんと何話してたの?」 「え?別に大した話じゃないよ。 あいつ内気でイベント事とか苦手だからさ、ちゃんと参加してるか気になって」 「そうなんだ……」 「どうした?そんな顔して。 もしかして、俺が浮気してるとでも思ったのか?」 「うっ、だ、だって……。 天唐さん可愛いし」 「何言ってんだよ。 美好の方が何倍も可愛いって。俺が保障する」 俺はそう言って、美好の頭をぽんぽんと撫でる。 「えへへ、幸生くんがそう言ってくれると嬉しいな」 すると、美好は顔をくしゃくしゃにして喜んでくれる。俺はこの顔が一番好きだ。 「でも実際、天唐さん人気あるみたいだよ? さっきもラブレター読んでるの見たし、告白した男子も結構いるくらいだもん」 「ま、そう言われればそうなのかもな。 でも夢は関係ない、今の俺には美好しかいないって」 「ありがとう、幸生くん」 「それに、あいつだってガキじゃないんだ。俺がそういうのを気にする理由はどこにもない」 「うん、それもそうだよね」 「さて、この話は打ち切りにして。出し物の話をしようぜ」 俺はそう言って今の話題を中断させると、本格的に打ち合わせに入る。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加