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「とは言っても、具体的に何をすればいいのかね?」
「うん、幸生くんにはコンサートの演出と、私が歌う曲を1つ作ってほしいの」
「曲?」
「せっかくだから、何かしらの能力を見せておいた方がいいでしょ?
もしかしたら、それが事務所の人の目に止まるかもしれないし」
「ああ、そういうことね。
わかった、できる限りやってみるよ」
「ありがとう。
でも、高校生らしい曲を作ってもらえればいいから、気楽に考えればいいよ」
「ん、了解。
それから演出か……、こっちはどうしたもんかな」
「ふっふっふ、話は聞かせてもらったぞ!」
そんな事を言っていると、ヒデが木の上から突然現れる。
「うぉっ、どこから湧いて出てきやがった!?」
「随分失礼な言い方じゃないか。
まあいい、それは置いといて。美好さんのコンサートの演出の件、俺たちも一枚かませてもらおうじゃないか」
「俺たち?」
「そう、俺たちロンリーボーイズにかかれば、どんな作業だって朝飯前だ!」
ヒデはそう言って、似合わない高笑いをしだした。だがそれよりも、その悲しい団体名は何なんだ。
「まあでも、いいかもしれないな。ヒデたちに手伝ってもらえれば作業も進むし、上手い事やれば管理職的な能力を見せる事もできる。
一石二鳥だな、美好はどう思う?」
「うん、私もいいと思う」
「おし、じゃあ決まりだな。
ヒデの申し出、ありがたく受けさせてもらうよ」
「ふふん、あまりの力に腰を抜かすなよ」
「はいはい、じゃあ早速打ち合わせを……。
って、もう家に着いちまったな。続きは明日にしようぜ、それまでに何かしら考えてくるって事で」
「うん、わかった」
「了解だ、他の団員にもそう伝えておく」
その日はそこまでにして、俺たちは別れた。
「……あ。
ヒデの奴、俺たちの話どこまで聞いてやがったんだ?」
それが気になったのは、玄関のドアを開けた時だった。
……
「ただいま、母さん」
「あら、お帰り。夕飯できてるわよ」
「ありがとう、いただきます」
母さんに促され、俺は夕飯を食べ始める。
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