第1章:終わりの始まり

5/12
前へ
/61ページ
次へ
「とは言っても、具体的に何をすればいいのかね?」 「うん、幸生くんにはコンサートの演出と、私が歌う曲を1つ作ってほしいの」 「曲?」 「せっかくだから、何かしらの能力を見せておいた方がいいでしょ? もしかしたら、それが事務所の人の目に止まるかもしれないし」 「ああ、そういうことね。 わかった、できる限りやってみるよ」 「ありがとう。 でも、高校生らしい曲を作ってもらえればいいから、気楽に考えればいいよ」 「ん、了解。 それから演出か……、こっちはどうしたもんかな」 「ふっふっふ、話は聞かせてもらったぞ!」 そんな事を言っていると、ヒデが木の上から突然現れる。 「うぉっ、どこから湧いて出てきやがった!?」 「随分失礼な言い方じゃないか。 まあいい、それは置いといて。美好さんのコンサートの演出の件、俺たちも一枚かませてもらおうじゃないか」 「俺たち?」 「そう、俺たちロンリーボーイズにかかれば、どんな作業だって朝飯前だ!」 ヒデはそう言って、似合わない高笑いをしだした。だがそれよりも、その悲しい団体名は何なんだ。 「まあでも、いいかもしれないな。ヒデたちに手伝ってもらえれば作業も進むし、上手い事やれば管理職的な能力を見せる事もできる。 一石二鳥だな、美好はどう思う?」 「うん、私もいいと思う」 「おし、じゃあ決まりだな。 ヒデの申し出、ありがたく受けさせてもらうよ」 「ふふん、あまりの力に腰を抜かすなよ」 「はいはい、じゃあ早速打ち合わせを……。 って、もう家に着いちまったな。続きは明日にしようぜ、それまでに何かしら考えてくるって事で」 「うん、わかった」 「了解だ、他の団員にもそう伝えておく」 その日はそこまでにして、俺たちは別れた。 「……あ。 ヒデの奴、俺たちの話どこまで聞いてやがったんだ?」 それが気になったのは、玄関のドアを開けた時だった。 …… 「ただいま、母さん」 「あら、お帰り。夕飯できてるわよ」 「ありがとう、いただきます」 母さんに促され、俺は夕飯を食べ始める。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加