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「ところで、本当にこの進路でいいの?
せっかく一流企業への就職が多い学校に進学したのに」
「いいんだよ、興味の無い仕事でただ金を稼ぐ人生なんて無意味だから。
自分の好きな仕事に就くのが一番さ」
「でも、あまり安定している仕事じゃないじゃない」
「大丈夫だって。
人間万事塞翁が馬、何かあったって何とかなるさ」
「……まあ、あんたの人生だから、あんまり口出しは出来ないけど」
母さんはそう言って、一緒に夕飯を食べ始める。
「ところで、最近の夢ちゃんについて、何か変わった事はない?」
「夢?」
「夢ちゃんのお母さんが、最近夢ちゃんの元気が無いって言っててね」
「そうなんだ。でもあいつ内気だし、元気があるかどうかわかんない奴だからなあ」
「何か、去年の11月辺りから少し元気が無かったらしくて。
その時はあんまり気にしてなかったらしいんだけど、最近になってますます元気が無くなってきたって言って、凄く心配してるのよ」
「ふーん。
ま、何かあったら伝えるよ」
「うん、そうしてちょうだい」
その後すぐ食事が終わり、俺は食器を片付けた後自室に戻った。
……
「さて、早速曲作りに取り組むとするか」
とは言っても、俺は作詞経験があるわけじゃないので、知ってる曲の歌詞を片っ端から見て行く。
「で、なおかつ美好のイメージに合った曲にしないと。う~ん、難しいな……」
うんうんうなりながら、俺は曲を作り続ける。
……
「よし、こんなもんか」
時計の針がとっくに12時を過ぎた頃、俺は何とか作詞を終える事ができた。
「さて、もうそろそろ寝ないと」
疲れで眠くなった目を擦りながら、俺は布団に入る。
「……夢の元気がない、ね」
布団の中で、俺はさっき母さんにされた話について考える。
「まあいいか、俺がそこまで干渉する事でもない」
それに向こうだって、あんまりまとわりつかれたら迷惑だろう。元気なんてそのうち出てくるだろうし、最悪、いい男が夢の前に現れて元気付けてくれるに違いない。
「あれ?でも確か、夢の元気が無くなり始めたのって……」
それが気にはなったが、その時にはもう睡魔が限界に来ていたのだった。
……
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