第1章:終わりの始まり

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「な、何かな?」 「いや、美好のコンサートで使う曲を俺が作ったんだが、どんなもんか夢にも見てもらいたくてな。 あ、もちろん本番までオフレコだぞ」 「うん、わかった」 そして俺が歌詞を手渡すと、夢はじっくりと目を通して…… 「……いい曲だと思う。 学生の元気さとか、前向きさが出てるって言うか」 「やっぱり、天唐さんもいい曲だと思う?」 「えっ、う、うん」 「そっか。それじゃあこの曲は、優等生の天唐さんお墨付きって事だね」 夢の感想に対し、美好も満足げな表情を浮かべる。 「『最初の一歩を踏み出せば   鉛の足が羽に変わる』……」 「お、天唐さんもこのフレーズが気に入ったんだな」 「それは良かった。前置きとサビの間、言わば終わりと始まりの場所。そこで一歩を踏み出す事が重要だと言う、この歌詞に秘めたメッセージを端的に表している、肝の部分だからな」 「凄いね幸生くん、たった一晩でそこまで考えて歌詞を作るなんて。もしかして、作詞の才能あるんじゃない?」 「いやいや、そんな事ないって」 俺たちはそんな感じでHRまでの時間を過ごしたのだが、その間夢はずっと、歌詞の1点を見つめ続けていた。 …… 「はい、今日はここまで」 「起立、礼」 「……ふーっ、終わったー。 美好、帰ろうぜ」 「ごめんなさい。今日は合唱部の人に、歌の練習を手伝ってもらう約束をしているの」 「あ、そうなんだ」 「うん、ごめんね」 「いや、俺は全く問題ない。 それより、美好に仲のいい女友達が出来てて、ほっとしたよ」 「幸生くんのおかげだよ、ありがとう」 「どういたしまして。 じゃ、俺は行くから」 「うん、それじゃあね」 俺は美好に別れを告げ、下駄箱へ向かおうとしたのだが…… 「ね、ねえ、幸生」 美好が教室を出るのと同じタイミングで、夢が話しかけて来た。 「ん、どうしたんだ?」 「あ、そのね……。 良かったら今日、一緒に帰ってくれないかなって思って……」 「え?まあ別にいいけど」 「本当!?よかったあ……」 俺がそう返事をすると、夢は何故か嬉しそうな表情を浮かべた。
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