カマキリの産卵

2/2
213人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「まずは食べなきゃ」 少女はそう呟いた。 窓から見える景色は夜明け前。 岬の先で少年が大きな旗を振っている。 赤い、赤い、真っ赤な旗。 風でその旗は広がり、旋回し、 少年は朝日と出航する船に歌を捧げる。 少女はまた呟く。 「あの子が落ちて死ねばいい。」 波がきらきら煌めいて、 カモメがゆるんだカーブを描く。 突風。 少年はよろけた。 運命。 赤い旗はぐるぐるまわりながら岬の下へ。 三文芝居のような結末。 「あぁつまらない」 少女はいった。 「思ったとおりになるなんて、なんてエスプリが効いてないのかしら?」
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!