自殺少年と自殺少女

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「げ」 その扉の向こうから現れた少女は、俺の存在を確認するや否や、心底嫌そうな表情で心底嫌そうな声を出した。そして溜め息を一つ。 「……ファミレスとかでさ」 なにやら言葉を発しながら少女が近づいてくる。今この屋上には、俺と彼女の二人しかいない。つまり、その言葉はきっと俺へと投げかけられているのだろう。 「自分が頼もうと思ってた物を他の人が先に頼んじゃって、同じの頼むのはなんとなく嫌だなー、ってこと、ない?」 フェンスを挟んだすぐそばまで近付き、彼女が言う。 「何の、話ですか?」 しっかりと確認してみたが、その顔に見覚えはない。見知らぬ人物にいきなりわけのわからない話をされて、素直に返答は出来ない。 「私がやろうとしてることを君が先にやってしまうのはなんとなく嫌、って話」 なるほど。つまり、そういうことか。 彼女もまた自殺志願者であり、奇しくも同じ日、同じ時間に決行しようとしたわけだ。ということは、彼女に引き止められる可能性などほとんどないだろう。ざまあみろ、深層心理。
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