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『え、ボクまだ名前言ってないのに…』
『そりゃ、だって…』
彼女が指差す先、ボクのリュックがあった。
鞄を探すのが面倒で、学校指定のビニールリュックを持ってきていた。
『アタシはナギサ。この病院は詳しいから案内したげる』
にっこりとボクへ微笑みかけるナギサを見て、ユウジは不機嫌にイラネと言った。
『そう、じゃケイタ君行こう』
ぐっと手を握られ、ボクはナギサの後を引っ張られ走った。
ユウジも一人でいても仕方ないと、渋々付いて来た。
病院は三階建て。
細長い敷地に細長く作られている為、端から端まで見て回るのは結構時間がかかる。
窓から覗けばすぐ横に民家があり、病院から中を覗けないように木を植えてある。
『ナギサ、詳しいって言ってたけど…』
『あぁ、アタシ此処に入院してたの』
さらっと、何でもない事のようにナギサは言った。
『よく夜中に病室抜け出して探検してたんだから』
明るく笑う彼女からは、入院という言葉は想像つかなかった。
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