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夏休みも終わりに近づいた頃、アレはもうあと十歩程度まで近づいていた。
自室にいてもヤツは目につく。
じっと見つめられながら、ミサキは熱帯夜にも関わらず頭まですっぽり布団を被って寝ていた。
もう臭いにも声にも、半ば諦めに近い形で慣れてしまっていた。
ソレが不意に変わったのだ。
臭いはいつもと変わらぬものであるが、声が聞こえない。
油断はできないと布団の中で耳を澄ませていると、ぎゃー!!とけたたましい叫び声が響いた。
たまらず跳ね起きると、部屋の出入り口でヤツがこちらに背を向けうずくまり、ぴちゃぴちゃと妙な音を立てている。
恐怖に固まっていると、ゆっくり、くるーりと、ミサキの方へソレは振り向いた。
口の周りを真っ赤にし、手には子供の腕を持っていた。
足元は赤黒い水たまり、臓物のような物まで見えた。
ソイツはニヤリと笑い、ミサキに柔らかそうな腕を差し出す。
ミサキはぐらりと視界が回るのを感じ、やがて気絶した。
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