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それから数ヵ月後、彼は昔の生活に逆戻りしていました。
が、ただ一つ違うことがあり、それは仮面を眺めたりせず、ただ部屋の隅で何かを見つめるかのように座っていることでした。
――おい、このままで良いのか?
「…何がだよ」
――彼女のことだよ。
「ほっといてくれ、聞きたくない」
――現実から目をそむける気か?
「そうじゃない、ただ…」
――ただ、なんだ?現実に目を向けず、幻想の彼女を追い続けるのか?
「…。」
――悔しくないのか?やり返してやりたくないのか?
「…悔しい。苦しい、辛い」
――そうか。ならそこの引き出しを開けてみろ。
引き出しを開けると、強く自己主張をするかのように銀色が光っていました。
――後はお前が決めろ。
「…ああ。」
銀色を手に持つと、彼は外へと歩き出しました。
――そうだ。それでいいんだ。俺。やることは解るな?
「…大丈夫だ」
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