仮面の男

8/12
前へ
/31ページ
次へ
それから数ヵ月後、彼は昔の生活に逆戻りしていました。 が、ただ一つ違うことがあり、それは仮面を眺めたりせず、ただ部屋の隅で何かを見つめるかのように座っていることでした。 ――おい、このままで良いのか? 「…何がだよ」 ――彼女のことだよ。 「ほっといてくれ、聞きたくない」 ――現実から目をそむける気か? 「そうじゃない、ただ…」 ――ただ、なんだ?現実に目を向けず、幻想の彼女を追い続けるのか? 「…。」 ――悔しくないのか?やり返してやりたくないのか? 「…悔しい。苦しい、辛い」 ――そうか。ならそこの引き出しを開けてみろ。 引き出しを開けると、強く自己主張をするかのように銀色が光っていました。 ――後はお前が決めろ。 「…ああ。」 銀色を手に持つと、彼は外へと歩き出しました。 ――そうだ。それでいいんだ。俺。やることは解るな? 「…大丈夫だ」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加