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痛みと恐怖にミノリは絶叫をあげた。
やがて皮膚が裂け、ぶちぶちと嫌な音をたて、それでも穴は腕を離してくれない。
喰われる。
ミノリははっきりと確信した。
この穴は自分を食っている。
穴の向こうに見えたものは食われた者の欠片、それとこいつの舌だ。
腕一本くらいくれてやる。
ミノリはとにかく生き延びる為に、激痛を耐えて引っ張り返した。
ぶちん
ミノリは鮮血まき散らし、肩から先を食わせ穴から逃げた。
尻尾を切り逃げる蜥蜴はこんな気分なんだろうかと、現実逃避した考えが頭をよぎる。
片腕を失いはしたが食われずに済んだ。
次は逃げる事を考えなくては。
穴はあの場所、ならば単純に考えれば真ん前の壁に出口がある筈だ。
ミノリは傷口を服でぐっと縛り、壁をくまなく探り始めた。
この部屋を生き物と仮定すれば、此処は両の頬を、または顎や鼻を袋状にして閉じ込めているのだろう。
ならば、必ずどこかに隙間がある筈。
ミノリは痛みも忘れ必死に探し回った。
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