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真奈美はひどく落ち込んでいた。
恋人の浮気が発覚し未だ決着つかず、その所為か仕事でミスを連発し、今日はあわやクビになりかけたのだ。
不幸は重なり団子になってやってくる。
精根尽き果てたと言わんばかりによろよろと歩く道、大きな橋にさしかかる。
見通しは良いが雰囲気は良くない。
夜の川は真っ黒で底なし沼のようだし、橋の袂には浮浪者の青テント村がある。
通る車はこれから楽しみに出かける暴走族のものばかり。
なにもかもがいやになる風景。
いっそここから落ちてしまおうか
そう思った時だった。
欄干を乗り越える人影が見えた。
やだ、身投げ?
ついさっき自分が考えた事も忘れ、恐る恐るソイツに近づいていく。
すると、ソイツは真奈美に気づいたのか、片手を放し真奈美に手を振る。
その笑顔は何とも異様、目をこれでもかという程に見開き、晴れやかな笑顔を浮かべている…が、視線は真奈美を捕らえてはいない。
真奈美は気持ち悪いなと思い先を急いだ。
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