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音のしない事に気づき手をおろす。
暫く俯いたまま、ゆっくり顔を上げていくと、黒いシャツの男は何事もなかったかのように欄干の向こう側に立っている。
「え、でも、今」
バンジージャンプかなにか?
トリックでもあるの?
混乱する頭で目の前の笑顔を見た。
すると、また男は更に口を歪めて笑顔になり、やがて手を離し落ちていくのだ。
今度は顔を覆う暇もなかった。
消えた場所をじっと見、ぐしゃっという何かが叩きつけられ割れる音を聞いた。
間違いない、男は橋の下で死んでいる筈だ。
すぐ後ろにいた者は、暫く無表情で下を見ている。
男のその後をしっかりと。
そして、真奈美の方へと向きなおり、にやりと笑って…落ちていった。
ぐしゃっという音と、少しぱしゃんという水に何かが跳ねる音がした。
まさか、これは集団自殺?
次の者も、真奈美を見て笑顔を作っている。
何がなんだかわからない。
真奈美はとうとううずくまってしまった。
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