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男は今箱に入れられている。
棺のような箱である。
箱の内部は明るく、毒々しいまだらな赤紫の箱。
その中に男は、遺体のように転がされている。
箱自体はそれ程頑丈とは思えない。
しかし男はそこから出る事を躊躇っている。
まず、男は動けないのだ。
彼の体のラインに沿って、針金のような突起物がびっしりと箱から伸びている。
鉄の処女を思い浮かばせるそれは、大人しくしている男には一切危害を加えない、何とも絶妙な距離間で配置されているのだ。
針金がないのは床に面する板のみ。
他の五方向からは常に、無機質に光る針が彼を見据えている。
次に、彼は裸だった。
この箱に入れられた経緯はおろか、いつ此処へ来たのかすら彼は知らない。
どんな目的で、誰が、こんな妙な装置まで作って彼を捕獲しようと考えたのか。
彼には心当たりが全くなかった。
無意識に動かした足が針金に当たり、無数の細かいひっかき傷が、チリチリと痛みとなって主張した。
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