記憶違い

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「あれ、俺のマグカップは?」  朝、いつものように起きた俺は、同棲中の彼女が作る朝食をいつものように食おうとした。 「そこにあるじゃない」  指された指の先には確かにマグカップがある。  しかし、 「俺のは青い奴だろ」  あるのは白いマグカップ。  彼女―美樹―の赤いマグカップと色違いで買った青い物ではなく、白い色違いのマグカップだった。 「うそ、白でしょ」 「俺、青が好きなの知ってるじゃん」  そういえばそうね、と首を捻る美樹。  しかしそれ以上は気にしないようで、朝食を食い始めた。 「洗ってないなら洗ってないって言えよな…」  それ以上の追求は無駄と、俺も朝食を食い始めた。  いつも通りではない朝。  いつも同じでないと気の済まない俺は、いきなりの予定外で調子を崩しながら仕事へ向かった。  白なんて買ってない筈なのにと悩みつつ、いつもの路線をいつもの場所でいつもの姿勢をとりながら待つ。  電車は人一人分ずれた位置に停車した。
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