序章

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人形部屋は一家団欒の場でもあった。 居間はあるのに皆此処に集まる。 この場所は皆が生まれた場所。 月見には自分が人形だという認識はないが、やはり此処が落ち着くようだ。 月見は椿が母親だと信じている。 翡翠は兄であり、父親は居ないと教えられた。 椿の関節部分の継ぎ目は大人になったら出るものなんだと思っているようだ。 椿も翡翠も月見が人形だとは言わない。 月見は『子供』、永遠に子供のままである。 髪は伸びるが成長はしない。 月見は子供であることが使命だから。 月見を見て椿は母親の笑顔を見せる。 椿は月見を我が子として育て(ふりをして)母親として精神を成長させる。 翡翠の作戦は概ね成功した。 しかし、母親としての行動が100%発揮されるのは月見に対してのみである。 翡翠には母性は見せるものの、余所の子のような扱いと主に対する扱いが混じった様なものだった。 それでも翡翠は良しとした。
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