序章

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その時間を奪い去る事件が起こる。 屋敷にある人形全てか、その女か。 どちらかを差し出せ。 どこかの国のお偉いさん、店に入るなりそう言い放った。 店にある人形は全て受注したもの、かといって彼女を渡すわけにはいかぬ。 彼は悩んだあげく、『3年間の間泊まり込みで人形を作り続ける』という条件をのんでしまった。 彼は残った注文の作品を作り上げ、遠い国へと旅だった。 彼女に店と、人形を託して。 彼は3年間の間必死で作り続けた。 3年経てば帰れる、そう信じて作り続けた。 出来るだけ多くのものをと昼夜問わず寝る間も惜しみ、ただただ彼女への愛情だけを頼りに。 人形が増えるにつれ彼はやせ衰える。 もはや精神力だけで動いていた。 それでも彼の人形は素晴らしかった。 皆それぞれに個性があり、愛らしく、そしてどこか狂気がにじみ出ていた。 3年後、彼は約束通り家へ帰ることが許された。
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