序章

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部屋に人形はなく、注文を受けた人形達なので当たり前の話なのだが。 しかし違った。 天井からぶら下がる彼女の足元、彼女の影の中に真っ白な封筒。 内容は彼が去った後の話だった。 彼が旅だった数日後、使用人を連れて再び男がきた。 そして気が変わったと、やはり人形も女も頂くと。 使用人に人形を運ばせている間、男は彼女を弄んだ。 人形は沢山あった。 一日で運びきれる量ではなかった。 人形部屋が空になるまで、男はこの屋敷に居座り、彼女に身の回りの世話をさせ、彼女を弄び、彼女の前でまじめで素直な彼を罵り続けた。 人形を運び終えると、男はさっさと出ていった。 その後は注文した人形を受け取りにきた客への対応と、近隣からの陰口、そして独りであることの重圧。 色々なことがのしかかった末、彼女は死を選んだのである。 手紙の最後に綴られた日にちは今日。 半日と経っていなかった。
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