序章

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その日から彼は人形部屋に篭もった。 彼女がぶら下がったままの部屋で、彼は人形を作った。 彼の心にはなにもなかった。 ただただ人形を作った。 その人形は銀色の髪に翡翠の瞳、等身大の大人と子供の間…18歳位のおのこだった。 彼は人形を作り終えると、すでに白骨化した彼女の横にぶら下がった。 ぶら下がる前に、人形に『翡翠』という名前だけを残して…。 誰も彼らが死んだことに気づかなかった。 何故なら、店は今も営業しているのだ。 彼らは屋敷の奥で今も生活していることになっている。 店は名を『翡翠堂』とかえ、弟子が受け継いだ。 銀色の髪の美しい青年だった。
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