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私がコエに気付いたのはまだ幼稚園の頃。
ある日私は、親の間違えで休園日にも関わらず、幼稚園に送られてきていた。
幼稚園が休みなんて事に気付かずにブランコに乗って遊んでいた。
空が近くなったり、遠くなったり…。キイキイとブランコの軋む音と空を切り裂く風の音しか聞こえなかった私の耳に他の音が聞こえてきた…。
『…ボ。コッチ。』
私は友達が来たものだと思いブランコから飛び降りると友達を探しに園内を走り回った。
教室、お遊戯室、トイレ…。
でも、誰も居ない…。
でも何処からかコエは聞こえる。段々怖くなった私は泣きながらグランドへと転がるように逃げた。
と、そこに母が迎えにやってきた。幼なじみが家に遊びに来て幼稚園が休みと分かって迎えに来てくれたらしい。
泣きじゃくる私を母は慰めてくれた。『独りぼっちで寂しかったでしょ。』と。
独りぼっちよりも私はコエが怖かった。確かに聞こえたのに誰も居なかった。
あれは何だったのか?大人になった今でも判らない。
でもこの時から私はコエが聞こえる体質になってしまったらしい…。
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