隙間が怖い

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『患者の話』  それはなんて事のない、どこにでもあるもの。  どんなとこにでも現れる、誰だって見た事のあるもの。  隙間  隙間が怖いんだ。  二~三センチばかり空いた隙間。  ただそれだけと思うだろ、違うんだ。  その隙間をじっと見ていればわかる、よく見てみれば、その隙間の先にある闇の中に動くものが見える筈だ。  ちらちらと蠢くもの、細くて十センチほどで五本セットで…そう、指だ。  真っ暗な闇の中に黒い指が、その少しの隙間を開こうとして蠢いている。  その時点で隙間をなくしてしまわなければ、その先に現れる物まで見てしまう事になる。  先生、わかるかい。  目だよ、目。  沢山の目がびっしりと、隙間からじっとこっちを見るんだよ。  目のない場所には指、どんな狭い場所でも変わらない。  なぁ先生、嘘じゃないんだ。  隙間には指と目があって、いつか隙間を広げて俺を引きずり込むんだ。  先生助けてくれよ。  隙間が怖いんだよ、隙間が。  隙間が怖いんだ。
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