隙間が怖い

4/7
前へ
/7ページ
次へ
 その晩、家路につく私は何故か隙間の事を考えていた。  隙間の向こうが闇とは限らない。  しかしあの患者には隙間の向こうは全て闇に見えるのだろうか。  黒い指…とも言っていたから、その指のせいで闇に見えるのかもしれない。  隙間にびっしりと目がある…物理的には難しい。  顔という概念なしに目だけが並ぶのだろうか。  そしてその隙間を埋めるように指が蠢き、薄らと空いた隙間を押し広げんとするのだろうか。  考えれば考える程わからない。  世の中隙間なんてない場所の方が見つけにくい。  どんなにきっちりと詰めても、なんとなく隙間はできてしまう。  あの患者はその隙間全てに怯え暮らしているのか。  例えば自販機と壁の隙間、コインロッカーと床の隙間、少し開いたドアの…周りを見渡せば隙間だらけ、指が入るだけの幅はあちこちにある。  きっとあの患者にとってこの世界は地獄に匹敵するものだろう。  そんな事を考えながら、暗い住宅街を歩いていた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加