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その晩、家路につく私は何故か隙間の事を考えていた。
隙間の向こうが闇とは限らない。
しかしあの患者には隙間の向こうは全て闇に見えるのだろうか。
黒い指…とも言っていたから、その指のせいで闇に見えるのかもしれない。
隙間にびっしりと目がある…物理的には難しい。
顔という概念なしに目だけが並ぶのだろうか。
そしてその隙間を埋めるように指が蠢き、薄らと空いた隙間を押し広げんとするのだろうか。
考えれば考える程わからない。
世の中隙間なんてない場所の方が見つけにくい。
どんなにきっちりと詰めても、なんとなく隙間はできてしまう。
あの患者はその隙間全てに怯え暮らしているのか。
例えば自販機と壁の隙間、コインロッカーと床の隙間、少し開いたドアの…周りを見渡せば隙間だらけ、指が入るだけの幅はあちこちにある。
きっとあの患者にとってこの世界は地獄に匹敵するものだろう。
そんな事を考えながら、暗い住宅街を歩いていた。
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