隙間が怖い

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 ふと、家と家の隙間に目がいく。  腕が通るくらいの細い隙間。  私は何の気なしに近づき、じっとその隙間を見た。  真っ暗な隙間はただの隙間であり、鼠一匹飛び出してくるような気配もない。  馬鹿馬鹿しい。  そう思い、隙間から目を離そうとした時、ざわりと暗闇が蠢いた。  驚きよく見つめると、闇の中を何か棒状の物が沢山壁沿いに這ってくる。  そしてそれは壁の角にまで到達すると、ざわざわと辺りを確認するように動いた。  それは紛れもなく指。  壁の角に指をかけ、なおも辺りをまさぐる。  やがて奥から白い物が近づいてきた。  もう私にはそれが何かわかっている。  目が、沢山の目が、少しづつ這い来るように。  指は左右の壁を押し広げようと力を込め、または引っ張り、うぞうぞと隙間にびっしり蠢いている。  目はすぐそこまで来ていて、じっと此方を表情読みとれぬ目線で見ている。  逃げたくても言う事を聞かぬ脚、私はガクガクと震え見つめ続けていた。
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