隙間が怖い

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 じりじりと近づいてくる目、指は壁から離れ、隙間から外へと延びてくる。  何かを捜し求めるように伸びる腕、しかし目は相変わらず隙間の暗闇に見えている。  やがて、逃げる事すらできない私の腕に指が触れ、それまでゆっくりだった指の動きがいきなり速まり、がっしりと私を捕らえた。  抵抗するももう時既に遅く、沢山の腕に捕らえられた私は隙間へと引きずられていく。  じりじりと音を立て地面を擦る靴の音、恐怖のあまりに掠れる悲鳴。  私は壁に手をつき、何とか逃れようと踏ん張った。  みしみしと背骨が悲鳴を上げ、腕が痺れ、それでも引き込まれまいと力を緩めず逃れようと必死だった。  どれだけ時間が経っただろうか、私は足下にまで迫った隙間を見る。  目が、嘲った。  その瞬間、私は隙間へと一気に引き刷り込まれた。  薄れゆく意識の中で、私の骨が凄まじい音を立てて折れていくのを聞きながら。  隙間の闇へと食われていったのだ。
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