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夏休み。
おばぁちゃんの家に来たボクはあの子を待っていた。
玄関で朝顔を見て、高い空を見上げて春の空を思い出す。
かつん、と石が足下に転がる。
門を見るとあの子が、あの日と同じ格好でのぞき込んでいた。
「また会えたね」
「今日は湖に行こう」
ボクらは手をつないで空を駆けていった。
湖の畔にたつと、狐面の子は湖面をつぃっと滑るように歩いていった。
「何故水の上を歩けるの?」
「簡単だよ、しっかりと背筋を伸ばして水の流れを見るんだ」
ボクは一歩足を出すけど、立てる様子はない。
「おいで」
ボクは男の子に手を引かれて、すっと水の上を滑るように湖の真ん中まで来た。
水はわっかをいくつも描いて広がっていく。
背筋をしゃんとのばし、腕を水平に広げると、ボクは男の子の助けなく水の上に立つことができた。
湖の中を覗くと、大きな魚や見たこともない生き物が沢山泳いでいる。
ボクは時間の許す限り眺め続けた。
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