第1話【疾】

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「うわぁぁあ!!」  鼓膜を破る様な悲鳴が聞こえた。  五月蝿い……。今度は何だ?  少しイラつきながらまた振り向いて見ると、鉄の球が人間の形に巨大化していた。  髪は無く、目や鼻、口の形のみがうっすらと掘られている。  どういうことだ?  動き出す鉄の玉は、この現実世界に在ってはならない。  それは、小説や漫画内だけの話だろ。  ギリギリと音を立てながら、ソイツはぎこちない動きで俺へと歩いて来た。  何なんだよ……何なんだよ、コイツ!?  現れる感情は至って普通。恐怖だ。 「ガ、ビジュグ、ジジソ。ガ、ビジュグ、セジゲポゾ」  何か言っている?  いや、何処かで聞いた?  とりあえず、逃げないと……。  怖がり、不思議に思いながらもそう判断でき、すぐに廊下に逃げ出す。  突然現れた化物と戦う様な、小説的な展開は絶対有り得ない。 「ゴラゲン、ジョブドグパ、リントグ、ギビスボドゾ、ジジャラグス」  鉄人間が叫ぶと同時に、その動きは速くなり、俺の首を右手で掴んだ。  ひんやりとした硬いその手は、まさに鉄。
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