第1話【疾】

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 そのまま廊下の窓をガシャン! と破って、グランドへと飛び出していく。 「あ……」  目の前に見える空では、鷹が鳩を口にくわえて飛んでいた。  お前も、同じか……。  助けを求めて右手を伸ばすが、それを取ってくれる者はいない。  代わりに、割れた窓ガラスの破片が少し刺さった。  自分の血が飛ぶ向こう側に見えた、驚いているみんな。  ……誰だよアイツ?  まるで俺を笑っている? 「クフ……」  そんな男子が見えた気がした。  でも今はそんなこと、どうでも良い。  他人から笑われたり、嫌われたりするのには慣れてる。  最近は、そんなことも少なくなったけど。  昔はもっと、クラスの中心的な感じだった。  いつからだろう?  他人と深く関わりを持たなくなって、色んなことを出来ない訳でも出来る訳でもない……普通になって。  普通過ぎるから、笑われ者にも妬まれ者にもならなくなった。  いや、そうやって他人から見た自分を考察してる余裕はないか。  誰も助けてくれないのも、そうやって笑われるのも仕方ない。
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