プロローグ

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 ──そして僕は彼を見つめた。  彼の黒い瞳は、怖れを表している。  残暑が厳しい、秋の一時。  西の方角からの橙色の光を遮る様に、疾風が雨雲を持って来た。 「ねぇ、想い出してよ。僕たちが生まれた、あの日のことを……」  話し掛けると、彼は左手でゆっくりとグランドの土からナイフを抜いた。  体を小刻みに震わしながら、恐れを消す様に、瞳にあれを宿す。  嗚呼、まだ抵抗する気なんだね? 「何のことだ……」  彼が呟いた、その瞬間。  キィィィンと、遠くまで金属音が響き渡る。  夕日に、僕の振るった鎌と、それに防がれた彼のナイフが輝いた。 「今までとは違う自分を感じているね?」 「……」 「図星だね?」 「黙れ!」  まだ、完全には気付いていないようだ。  ただ、少しは感じ始めている。  今はまだ、それで良い。  今はまだ、その方が良い。  僕と彼……2人同時に存在してはならない者。  この運命を恨むことはお門違いだろう。  その為に僕たちは生まれ、殺し合うのだから。 「僕は君を“星の為に”殺さないといけないんだ」 「どういう意味だ!?」 「僕と戦っていれば……その内解るんじゃないかな?」  クスクスと笑う僕。 「そろそろ本気で行くよ。           虚川 疾!」
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