5人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
キーン、コーン、カーン、コーン。
学校中に響く、聞きなれたチャイムの音。
「起立、姿勢、礼」
「ありがとうございました」
クラス全員の挨拶で、4時間目終了。
いつものように、男子と女子の集まりができる。
その中に入らない人間は、寝ているか給食の準備をしている。
此処は2年A組の教室。
壁は白いコンクリートでできていて、所々に落書きがある。
俺たちが書いたものではない。
昔、学校が荒れていた時代に書かれたのだろう。
適当なぐるぐるや自分の卒業時に書き残した物。
定番の相合傘まである。
床は白い大理石だが、机や椅子を引き摺った傷が沢山あった。
掃除の時に、先生が注意しているのに持ち上げて運ばないからだ。
廊下はグランド側にあり、反対にはガラス窓がある。
ガラス窓の向こうには、青々とした森が広がっていた。
教室の引き戸を開け、廊下に出て本を読もうとしている人物が1人。
白い半袖のカッターシャツと黒い学ランのズボン。
寝癖の付いた黒髪は、よくカラスの様だと言われる。
その少年は──
俺、虚川 疾(ウロカワ カゼ)。
別に何の才能もない、ただの中学生だ。
最初のコメントを投稿しよう!