第1話【疾】

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 キーン、コーン、カーン、コーン。  学校中に響く、聞きなれたチャイムの音。 「起立、姿勢、礼」 「ありがとうございました」  クラス全員の挨拶で、4時間目終了。  いつものように、男子と女子の集まりができる。  その中に入らない人間は、寝ているか給食の準備をしている。  此処は2年A組の教室。  壁は白いコンクリートでできていて、所々に落書きがある。  俺たちが書いたものではない。  昔、学校が荒れていた時代に書かれたのだろう。  適当なぐるぐるや自分の卒業時に書き残した物。  定番の相合傘まである。  床は白い大理石だが、机や椅子を引き摺った傷が沢山あった。  掃除の時に、先生が注意しているのに持ち上げて運ばないからだ。  廊下はグランド側にあり、反対にはガラス窓がある。  ガラス窓の向こうには、青々とした森が広がっていた。  教室の引き戸を開け、廊下に出て本を読もうとしている人物が1人。  白い半袖のカッターシャツと黒い学ランのズボン。  寝癖の付いた黒髪は、よくカラスの様だと言われる。  その少年は──  俺、虚川 疾(ウロカワ カゼ)。  別に何の才能もない、ただの中学生だ。
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