10人が本棚に入れています
本棚に追加
新幹線のホームを降りるとむずかる沙耶香の手を引き、
慌ただしく改札を駆け抜けた私は直ぐ様タクシーに乗り込んだ。
矢張り夫には無理を言い、転勤には付き合わず地元に残るべきだった。
半年前、認知は進んでいたが肢体に不自由の無い父を、
夫の尽力により一億の現金を支払い私は有料老人ホームに入居させた。
設備は万全だったし健康であるならば父に不自由はない。
しかし不運とは多くの場合、妥協と怠慢の声と共に到来するものなのだろう。
転勤先での生活が落ち着くまもなく、脳梗塞で父が危篤に陥ったとホームより連絡を受け、
私は自分の妥協と怠慢を心から反省した。
最初のコメントを投稿しよう!