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病院に着くと、父が一命を取り留めたとの告知を直ぐ様主治医から受ける。
私はホッと胸をなでおろした。
しかしそれも束の間、
その後の主治医の言葉には悪い知らせが手ぐすねを引いて待ち構えていた。
父は右半身が麻痺になり、更に食道癌が発見されもう回復の見込みはないと云う。
私たち夫婦は苦渋の選択の末買ったばかりのホームの権利を売り払い、
夫には単身赴任の無理を頼み、私は父と沙耶香との三人での生活を自宅で始めた。
しかし幼い沙耶香と認知の父の介護、
それは想像をはるかに超えた苦難の連続だった。
だがどんなに辛くとも私はデイサービスを頼むことはせず自力で事にあたった。
父を一人にして後悔するのはもうたくさんだ。
私は耐えた。
何があっても只管に耐えて父の介護に尽くした。
しかし日増しに癌の悪化により衰えていく父
私はそんな父に何もしてあげられないことにだけは耐えられない思いだった。
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