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「もう、素直じゃないんだから。リヒトさんが聞いたら大号泣よ?」
「知らん知らん!」
本人不在時まで照れなくてもいいのにと、アイリーンは少々呆れを含み苦笑いする。
「お仕事再開、行ってきまーす。」
「行ってらっしゃい。」
「兄上殿。オレが居ないからって、アンに変な事しないでくれよ?」
「弟の嫁にちょっかいを出す程飢えていない。リアさんなら保証出来んが……」
「リアならライと付き合ってるからダメですよ?」
「なんだとッ!?……そうか、それで私の求婚に応えてくれなんだか。決めた想い人が居るならば言ってくれれば良いものを、リアさんは奥床しいのだな。そうかそうか……。」
何か言い掛けたフレイだったが、開いた口をそのまま閉じて部屋を出ていく。色々と勘違いしているが、彼の中で帰結し納得しているなら余計な事は言わないでおこう。
「義兄さんも大変ですね。貴重な時間、私の所に居ていいんですか?」
「義妹と過ごすのも大切な時間だ。……先月子供が生まれたばかりで、お前も辛いだろう。」
「自分で決めた事ですけど、まだ産まれたばかりで身体も弱いし、心配だし、子供達にも町の皆さんにも申し訳ないし……」
アイリーンは眼を伏せ、眉を下げて言う。子供達を預けているブルーノ邸に置いてきたクリスタルセンスからは毎日通信があり、子供達の日々の様子が送られてくる。それは毎日の癒しであり、同時に傍に居てあげなかった事を心苦しく思う。だがそんな子供達の姿は一時でも早く、そして全員が無事に帰れるようにと、活力と勇気をくれる。
「義兄さんはご家族と逢えてますか?」
「いや。戦争が始まって以来、王族の老人、女性、子供は遠方の別宅にて生活している。防衛力は王都より劣るが、標的にされにくい分ずっと安全だ。」
3人の妻に、各々の間に授かった子供は計4人。子供達は皆5歳未満で、これからの成長が楽しみな時期。エトワールもまた家族と離れ、寂しく不安な日々を送っている事だろう。
「そうですか……早く終わらせましょう。この戦争を。」
「あぁ、勿論だとも。」
―――――――――――――
「アンは分かるとして、何でお前達までついてくんの?」
翌朝、病院への道を歩くフレイはライとリアに目を向ける。
「途中まで一緒なだけ!オレの魔法、ドロイドとか兵器の……た、耐電圧…性?……を、調べるのに使いたいって。」
「私はフェンリルさんから授かった力を試したくて、同じ試験場に向かうところだ。」
「おのれフェンリルめ……ますますリアが怖くなっちまったじゃねぇか……。」
「何か言ったか?」
「いえ!何も!」
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