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ライが連合軍に居る事はクラレンスは知らない筈。以前ティアンナが独自に開発した高電磁波により機械のショートを引き起こした道具の類は、多くのヒュム族国家が開発、保有している。クレアラグーンでの戦いで、連合軍がヒュム族と手を組んだ事は露見した。クラレンス側の部隊編成も耐電性の高い素材を用いた兵器をより全面に出し、開発者も特殊素材の開発に今まで以上に躍起になる事だろう。
「開発職に関われるなんてスゴいね。」
「ふふん!唯一無二の魔法を操るオレが活躍する場だぜ!」
「唯一無二じゃないけどな。」
「なぬ!?」
「ヒュム族に発電の技術があるように、バイアス族にも術式を用いた電気系の魔法がある。」
「なんだ、雷の魔法ってあるんだ……」
そこまで凹むかと周囲が引く程ショックを受けているライ。フレイが言うように術式の展開により電気系の魔法は存在するが、術式自体が複雑でどうしても大掛かりな物になる為戦闘には向かず、生活面に於いても魔力がエネルギーの主流である為、まだまだ開拓の余地がある分野として研究が重ねられている。
ともあれ、雷の“ストラ”を保有している人間は唯一無二、ライだけなのは確かだ。
「あ、私患者さんに買っていく物があるんだった。」
「じゃあ先に行ってるよ。」
時間に追われているフレイは先に病院へ向かい、アイリーンの買い物にライとリアが付き合う。
買い物を済ませ病院へ向かう途中、頭の高いところで束ねた長い黒髪を揺らし、街中をキョロキョロと見ている男が居る。和服に腰に差した細身の剣、横から覗く骨格の違う顔立ちはヤマトの民だろう。
「おい兄ちゃん、困り事か?」
「ん?」
「バっ……!少しは礼儀を弁えろ!」
「いたっ!」
初対面、年上、異国の人物。礼儀を弁えるべきフルコースな状況にも変わらない態度のライの頭を叩くリアの力は、心なしか今までより強い気がする。おのれフェンリル!………と思ったライだが、おそらく関係無いだろう。
ライとリアのやり取りを不思議そうに見ている男性の顔を、静かに歩み寄ったアイリーンが覗き込む。
「あのぉ……」
「?」
「外人さんですか?あ!えっと……コトーバハ、ワカーリマスカ?」
アイリーンよ、外人なのは見てわかるだろう。そして片言だが話している言葉は普段と変わらない共通語だ。
「はい、異国からやって来た者です。母国でも基本共通語を使いますので、言葉も分かります。」
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