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「喩え生まれ変わってでも私は待つ。そう言った筈だ。」
「分かってる。でも、どんなに強くても、人の気持ちって変わるもんだと思うんだ。お前には今の気持ちに囚われ続けてほしくない。これは万が一、億が一、オレ以外にお前を幸せに出来る人が居たら一緒になってほしいっていう、オレのワガママ。」
「……なるほど。うん、分かった。」
「え!?」
「え?」
予想外にあっさり頷いたリアに間の抜けた声が飛び出すライ。言葉に嘘偽りは無い。しかし何と言うか、こう………もう少し食い下がってほしかった。
「午後も大変だからな。シャワー浴びて一眠りして、アイリーンにケガを治してもらってこい。」
ポカンと口を開けているライを余所にリアは立ち上がり帰りを促す。
ショックで放心に近い状態だったライは部屋に戻るや、溜まった鬱憤を晴らさんとジークを叩き起こし、汗臭いという文句に聞く耳も持たず先程のリアとの会話の一部始終を愚痴る。
「リア、やっぱり素敵な女性だよね。」
「どこが!?確かにアイツには幸せになってもらいてぇよ!?でもさ!受け入れ過ぎだろ!!」
「要は、リア自身が何を幸せだと思うかって事だよね?それは僕らや、ライでさえ決めつけちゃいけない事だと思うな。」
「……ん?」
「つまり、ライの気持ちは受け取った上で、いいって思う人が居なければ一生他の人とは一緒にならないって事でしょ?」
「……ハッ!そういう事か!」
「本当に言葉通りに受け取ってたの……?」
ジークの幻滅の眼差しを受け、ライは冷や汗を滲ませながら高速で首を横に振る。
「リアの野郎!そ、そうならそうとストレートに言えよなッ!!」
「だいぶストレート寄りだと思うけど?」
「す、素直なオレには分からないの!」
「物は言いようだね。」
相変わらず冷ややかなジークの視線から逃げる様にライは浴場へ行き、さっさと身体を洗うと布団に潜り込む。
数時間後、特に痛む箇所をアイリーンに治してもらいライは練習場へ急ぐ。そしてまた手加減の無いヨシツグに扱かれ、無数の傷と共に技術を学ぶのだった。
―――――――――――――
それから連日、ライがヨシツグのスパルタな稽古に耐える中、禁断の森からフェンリルが戻る。
訓練に明け暮れているライに代わり、帰還の報告を受けたリアとフレイが話を聞く。
「召喚魔法の応用の件、やはり禁断の森なる場所が適している。あの場は魔力が地底より吹き出し、魔力が魔力を集める限られた場所です。」
「そうですか、ありがとうございます。それじゃ、いよいよ本格的に研究しますか。」
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