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約1週間後、ガルーダが禁断の森より帰ってきた。活力に溢れた姿、本人は“寝過ぎた”と悔やみながら言うものの、これから戦いに赴く者にはこの上ない心強さだ。ガルーダは戻る前にニルヴァーナにある精霊の森があった場所に寄ったが、フェンリルの予想通り朽ち果てた森は跡形も無く消え、ニーズヘッグの魔力に当てられ周囲の狂った時間も元通りになっていたそう。
フェンリルに禁断の森の特殊な環境を聞いてから、ライ達は隙間時間を見つけては謎に満ちた召喚魔法を研究、アヴァロンへ送る術としての応用方法を考えている。だがさすがは古代の魔法と言うべきか、改良した魔法陣を考案しても全く魔法が発動しないものばかり。魔の知識に精通した者の手を借りたいところだが、召喚魔法は二つの世界の均衡を崩し、結果的に現代の世界大戦を引き起こした要因の一つとも言える。アヴァロンへ戻りたいというエンテレケイアの意思を尊重する点でも、召喚魔法に関しての情報を大衆の元を晒し協力を求める事は出来ない。
「新しい魔法一つ考えるのって、こんなに難しい事なのかぁ……?」
「ものによる……コレはまぁ、難航して然るべきだわな……。」
上げられない成果、ライ達は机に突っ伏し溜め息を吐く。
そこへ不意に現れたのは水になり姿を眩ませていたグランガチ。不出来な魔法陣を描いた紙の数々を見た後、視線はライ達へ向けられる。
「心から信頼出来る他っていうのは、そう多くないのかも……でも、過信した信頼が、本物になる事ってあるんじゃないかな……?」
「信じたモノが本物に、か……」
「フレイはともかく、アタシら基本的な魔法陣しか知らないしねぇ。」
「時間無いのに僕らだけでなんて、そもそもが無謀だよね……?」
人間の汚い部分を嫌という程見てきた。それは自分自身も例外ではない。不安は拭えず、未知の魔法に邪な考えを持つ者は現れよう。それでも信じて協力を仰がなければ、魔法の完成は絶望的。
ジークとティアンナは上目遣いで順に皆の顔を見ていき、ライは机を叩き立ち上がる。
「よしッ!頼もう!」
「そうは言っても、一体誰に?」
「いくつかの誓約を伝えた上で、レグナムの魔術研究所に籍を置く人材、それから各国の魔術に精通した権威ある人材に話をしてみる。」
「あの……僕らは元々、自力で扉を開く予定だったから…む、無理して、揉め事みたいになるくらい、なら……」
「それ、強引な力技だろ?実際出来るか分からないみたいだし、少しでも成功の可能性があるならコッチの方がいいに決まってんじゃん!」
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