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「何であれ力になれるなら、私達は全力で取り組みます。」
「……皆、各々不満もある。けど、僕らは基本的にやりたい事をやっているだけ……。欲望の化身であるエンテレケイアは皆、ワガママだから……ぼ、僕らが皆を、巻き込んでるんだ……」
「最初にエンテレケイアをゴタゴタに巻き込んだのは人間だろ?ならグランガチも、存分にオレらを巻き込めって!」
「ライ……皆も…あ、ありがとう……。」
グランガチはバハムートのストラである指輪を持つ小さな手をモジモジと動かし、照れ笑いを浮かべて身体を水に変えその場から消えてしまう。
次の行動に移るべく、フレイは早急に動く。資金、資材、施設の提供に伴いエトワールを含めたレグナム・バスティアの要人と、国や種族問わず魔術に深く精通した人材を選抜、個室に集め、本題に入る前に誓約を提示する。
一つ、この件に関しての一切の情報を他言しない事。
一つ、この研究に関する全ての資料は“極秘作戦”終了後に全て破棄、保存しない事。
一つ、如何なる理由があろうと完成した魔法、並びに応用した魔法を私的に使わない事。
一つ、誓約する者は一生涯残る呪術をその身に受ける事。
主立った誓約はこの4つ。誓いを破った者は施した呪術によりすぐさま居場所を突き止められ、重い処罰を受ける。成功報酬は考えているが、正直協力に見合った額とは言えない。利益よりも優先すべき道理を持つ、寛容で誠実な人物がこの中にどれ程居るか、フレイは内心不安だった。
だがそんな心配は必要無かったと、彼はすぐに知る事となる。
誰一人として席を立つ者は居らず、全ての項目を確認すると誓約書に署名する。呪術は危険なものが多いが、これは呪術を受けた各自を記憶し、定められた誓いを破った時にその者の居場所を特定するもので、この魔法自体に危険性は無い。
王族であるフレイとエトワールが初めに呪術が施されている魔術書に触れ呪術を受ける事で周囲の不安感を取り除き、その場に居る全員が次々に呪術を受けていく。
いよいよフレイは本題を切り出す。星の記憶で観た召喚魔法の魔法陣の写しや、太陽と月の巫女が行っていた儀式、当時のあらゆる情報を開示し、目的を告げる。
連合軍は大規模過ぎるが故に、未だエンテレケイアが何者なのか理解していない者も多く、知能の高い魔物かと思っている者も少なくない。加えて、アヴァロンに関しては存在自体知らない者が大多数。そんな状況の中で聞かされた話は耳を疑うものばかりだったが、未知の魔法に対する研究者達の好奇心が話を柔軟に受け入れさせた。
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