Prolog

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Prolog

この世界、リュミエール・ラテール 幾つかに別れた大陸と数多の島々は緑、水、砂、白銀、様々な色に覆われ、天空からは育みの光射す、自然のままに時が流れる美しき世界。 しかしある1つの生物の手により、美しき世界は姿を変える。 その生物の名は『人間』 この世界には、大きく分けて2種族の人間が存在している。 人間の一種である『ヒュム族』は博識の種族。留まるところを知らぬ好奇心は無知を恐れ、際限無く抱く欲望のままに野山は拓かれ、水辺は埋め立てられてきた。やがてヒュム族の文化が発展した大陸には僅かばかりの自然だけが残り、独自の科学技術で生み出された機械や人工物で埋め尽くされた。 同じヒュム族同士で賛否はあれど、傍若無人な振る舞いを咎める事は一概には出来ない。先人達の偉業の数々は己の種が繁栄しやすく、安寧に暮らせる環境を整える事に繋がり、不平不満を垂れる現代の人間もその恩恵を受けているのだから。 もう一種の人間、『バイアス族』は力と魔法の種族。彼らはヒュム族と獣を合わせた様な見た目をしており、その姿は多種多様である。彼らはストラと呼ばれる魔力の結晶を体内に持ち、自在に魔法を操る事が出来る。 古くから自然と共に生き、彼らの文化が発展した大陸は魔法による創造物と自然が調和している。しかし時として理性よりも本能が勝る事があり、その様は正しく獣の如きもの。闘争本能による戦いは大地を穿ち、森を焼き払い、水源を枯れさせその地の環境を大きく変えた。 彼らは筋力が発達しやすく、力はヒュム族の比ではない。また、生まれてからの5~6年の間は1年に1歳、以降は3年毎にヒュム族のおよそ1歳分の成長をする為、ヒュム族と比べると寿命がとても長い。その理由として考えられているのは『化身(けしん)』という能力。 バイアス族は幾つかの種族に別れており、各々の種族に合わせて獣の姿になる事が出来る。その能力が化身。化身が出来るようになるのはおよそ5才を越えてから。丁度成長が遅くなる時期と重なっている為、その影響からだと考えられている。 ヒュム族とバイアス族は同じ人間でありながら、いつからか知らぬ戦いを何百、何千年に渡り続け、差別と偏見の溝は底知れず。 所詮、人間は自分と違う者を認める事など出来ない愚かな種なのかもしれない。 しかし、人間は信頼を抱ける心を生まれながらに持っている。姿形が違えど、互いに尊重し合い、敬意を持って接すれば、いつかきっと……… これは、そんな殺伐とした世の中を様々な志を持ち生きた、魂達の物語りである ────
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