3人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの頃はまだ慎ちゃんもいるよなあ」
武志の声が落ち着いたように聞こえる。
おれたちにはもう一人、慎太郎という親友がいた。
「あのとき、慎ちゃんだけはずっと心配してたよ。武志のことさ」
慎太郎は高二になる頃に死んでしまった。
「あいつが怪我したわけじゃねえのに、泣きそうだったよな」
武志が笑った。最近になってようやく、慎太郎の話で笑えるようになった。
慎太郎は通り魔に刺されて死んだ。突然すぎて何も理解出来なかった。人が死ぬということを初めて身近に知った。
あの慎太郎の優しい声が二度と聞けない、二度と一緒に笑えないんだと思うと涙が止まらなかった。
でも慎太郎はいつもでもおれたちの中にいる。おれたちの記憶から絶対に消えやしない。そう思うようにすると、少しは笑える気がした。
こうして笑えば慎太郎も笑ってくれる気がしていた。
最初のコメントを投稿しよう!