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走り出したおれはすぐにあの場所に着いた。そして同じ景色を見た。 小さな川が流れる狭い道を、あのときと同じように一人の少女が歩いていた。さくらだ。 このまま走り声をかければ、おれはさくらと出逢うことになる。 でもこのまま走らずに別の道を歩んだらどうなるのか。 さくらと会わなければ運命が変わることになるかもしれない。 それでもおれは新しい人生を踏み出したかった。自分の求めているなにかを見つけたかった。 おれは右の小道に入り、さくらとは出逢わないように遠回りをして学校へ向かった。 なにか罪を犯したような後ろめたさが心の中に残った。でも走り続けた。新しい明日はここから始まるんだと思い込んだ。
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