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しばらく走っていると校舎が見えた。5年前に来ているのだから当たり前なのだが相変わらずのたたずまいだ。 おれはグランドにある小さな門から校舎に入った。正門から入ると生徒指導部の先生にとやかく言われるのを身体が覚えていた。 正門前に立っている熱血教師の目を盗み生徒玄関に入った。 久しぶりに走った上に遠回りしたせいでだいぶ息が上がっている。 扉を開けると一人の少女が下駄箱のそばで下を向いて座っていた。同じように息を切らしている。 少女は玄関に入ってくるおれの顔を見上げた。 おれの顔を見るとふっーと息をはいた。 「間に合って良かったですね」 少女のことをおれは知っている。汗ばんだ栗色の髪が少し乱れている。少女の目が虚ろに漂い安堵の表情をした。 そこにいたのは制服を着た5年前の姿のさくらだった。
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