~猿の主~

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鳥の囀りが透き通るように聞こえる明朝。 そんな囀りさえも聞こえないほどの、決意、不安、期待を抱えている光鬼。 今日は、初めての修行の日。 父、淳一が光鬼の部屋の襖をあけ、「これに着替えて表に出ろ」と、だけ言い光鬼の部屋を後にした。 父から渡された服は、明らか動き辛いような和服。背中には花火職人みたいに大きな字で"36代目 猿"とだけ書いてある。 いやではないが、好みではない。といった感じの服を身に纏い、朝食を食べ、歯を磨き、顔を洗い、父の言っていた場所まで来たが、ここは祖父の使っていた小さな庭だ。 「ここで修行すんのか?」と、不安の声を漏らすと、 「お前は馬鹿か?ついて来い」と、狭い脇道に入った。 そして、父が猿岩石を地面に翳した。 すると1平方メートル位の扉が地面に浮き上がった。淳一は、その扉を開き階段を下りなかへなかへと進んでいく。ついてこいと背中で語るように、、、、、、、、なかは暗く、前にはいるのだが、前にいた父が見えなくなっていた。行き止まりになったのか、父の足音がとまった。 父がまた猿岩石を取り出し今度も壁に翳した。すると、今度は二畳ぐらいの大きな扉が浮き上がった。 淳一は、「ここは、お前が開けるんだ」と言い、光鬼に前を譲った。 光鬼は無言で扉の前にたち、扉の取っ手を強く握りしめ、至極錆び付いた扉を開けた、、、、、、、、、、、、、、、、。
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