晴れぬ空、不諦の先には

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(???視点) ―――― ――― ―― イギリスの地下にある都市。 魔法に関わっている者のみが入ることの許される秘匿の世界。 その中にある大図書館。 世界から数多の書物が集められた施設の中で、 風見学園の制服を着た彼女がいた。 「これも違う……」 セーカ・サカキバラは三人用の長机を埋め尽くす程に書物を積み上げ、一心不乱に読み続けていた。 「あーもう……っ! もう時間が無いっていうのに……」 一冊読んでは捨て、また一冊読んでは捨てる。 彼女の求めている答えは見つからないようだ。 私はセーカに近づき、声をかけた。 「セーカ」 「あ、師匠……」 それでようやくセーカは私の存在に気が付くことができた。 やれやれ、今は枯れない桜の木の時のように気配を消す魔法は使っていないというのに。 「少しでもいいから休憩したらどうだい。根を詰めすぎだ」 「大丈夫です。トイレと食事と睡眠分の休憩は取ってます」 休息を提案するもセーカはきっぱりと否定した。 しかしたった数日だと言うのに、彼女の憔悴っぷりは一目で分かる程に明白だ。 「それだけでは足りないから言っているんだよ」 「……何もせずに休んでなんかいられませんから」 そう答えつつもセーカは読む手を止めない。 その強情さは私には覚えのない程の物だ。 だからこそ、想いの強さが伝わってくる。 「そんなに彼が大事なのかい」 「はい。どうしても、助けたいんです」 彼女は力強く頷き答えた。 私は思い出す。 セーカが幼い頃に初音島にてはぐれた後に合流した時の嬉しそうな顔を。 そして短期留学の間に、手紙や電話にて伝わってくる喜びの報告を。 やれやれ……――仕方ないね。 「彼を助ける為に、自らの運命を捻じ曲げることになってしまったとしても、かい」 その言葉を聞いたセーカは、瞬時には意味が理解できないようで困惑の表情を浮かべた。 「え……? それは、どういう……」 だが数秒の空白の後、理解が追いついた彼女は顔を引き締め直し、首を大きく頷かせた。 「──構いません。私がどうなろうと、麻野君が助けられるなら」 「そうか……」 詳細を聞かずとも承諾してみせた彼女の決意を聞いた私は、 ――いや私も、決意を固めた。 「本来ならこれは誰にも見せず、墓まで持っていく覚悟だったのだがね。セーカ、君の想いに応えよう」 魔法を使い、私室に用意しておいた数枚の資料を手の内に転移させる。 それをセーカへと渡した。 「これは……?」 「かつて私が編み出し、そして封印した「禁忌」の魔法さ」
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