世界

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「ねぇ、君は知ってる?僕達の生きている現実はね、実は全部本の中の物語に過ぎないんだ。 ほら、そこの本棚に立っている一つ一つにも世界が存在するんだ… もしかして、今誰かがこの僕達の会話を読んでいるかもしれないね」 彼はそういってクスクスと楽しそうに笑った。 私は、そのはなしを聞いて恐くなった。何故彼は笑っていられるのだろうか… 今この考えすらも誰かが読んでいるかもしれない… その事に怯えて暮らしているある日私は彼女に出会った。 銀色の髪に黄色と青のそれぞれ違う色をした不思議な瞳、桜色の形の良い唇。 見た目からして、何処か人間離れしていて私は、畏れを抱いているのに話かけずにはいられなかった。 話しかけてみると、とても気の利く人で頭も良く直ぐに打ち解けた。 だが彼女は、直ぐに此処を離れてしまうと言うのだ。 「私の意思なんて関係ないの。 雨が降れば地面は濡れる、それと似たようなものなの。 それが来れば、私は次の本へ移っています。 避けようが無いの、これは私達一族の定めなのだから…」 彼女はそういって少し寂しそうに微笑んだ。
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