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「さて、降りますよ」
森の境目辺りに差し掛かった所で早苗が言った。
下を見ると木造の建物っぽいものがある。
「了解」
とりあえずよく分からないまま、黙って早苗に従う。 ゆっくりと下降していき、地面に足が付くや否や木造の建物を見た。
「これは・・・・・」
見た目は店っぽい建物で、入り口の上に寂れた文字で『香霖堂』と書かれている。 そして何より目につくのは店の周りに置いてある物だった。
真っ赤な看板に止まれと書かれている物、ところどころ壊れているパソコンやテレビなど・・・・・つまり外の世界の物ばかりだった。
「早く行きますよ~」
周りの物に目を奪われていると、早苗が手を振って入り口の前で待っていた。
「あぁ、スマン」
そう言って俺は入り口の前に駆けつけると早苗は扉を開けた。
カランと喫茶店に入る時のような音が鳴り、中の様子をみると、どこかで見たことがある物だらけの部屋に白髪で眼鏡をかけた青年がゆらゆら揺れる椅子に座りながら本を読んでいた。
「いらっしゃい。 今日は見かけないお客さんがいるね」
こちらに気付いた青年はパタンと本を閉じ、適当な場所に置くと、こちらに来た。 どうやらここの店主みたいだ。
「霖之助さん、久しぶりです」
「久しぶりだね早苗。 この子は誰だい?」
早苗と青年は親しいらしく自然と会話が始まった。
「彼は最近来た外来人の夢叶 新一ですよ。 まだ天狗にも知られてない貴重なネタの塊ですよー」
「それは確かに貴重だ。 私は森近 霖之助。 ここ香霖堂の店主だ。 よろしく新一」
早苗の言葉に少し笑いながらもすぐに切り替え自己紹介し、手を差し伸ばしてきた。
「こちらこそよろしくお願いします」
俺もそれに答えるように霖之助さんの手を掴み握手した。
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