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そんな彼に驚いたのは私だけではなかった。隣り座っていた彼の友達が驚いてパッと私を仰ぎ見る。 「え!おい、星慈っ?」 でも彼は友達の言葉を無視して私の腰に手を回すと私をエスコートするように踊っているみんなの方に歩き出す。 「アンタの名前は?」 騒音に消されて聞き取りにくい彼の声に必死に耳を澄ませ、私はおずおずと口を開きかけて気が付いた。今、私はいつもの自分じゃないのだ。本名を名乗るのは気が引ける。 「ミウ。」 「そう。」 これはあくまでも仮の姿なのだから。今の私は美世里ではないのだ。
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