47人が本棚に入れています
本棚に追加
相手は自らを賞金首……犯罪者だと認めた。
「それは肯定と受けとるぞ……」
そして、一呼吸。
「これより、疾迅の騎士団の名の下に貴様らを捕縛する!」
自らが所属する王国最強の騎士団の名を高らかに叫びながら、勢いよく剣を抜く。
だが、ジオにこの3人を捕らえられる程の力量は存在しない。
そのことをジオは理解している。これはただ、シークを逃がすための時間稼ぎ。
「ほう、疾迅の騎士団か。まだ若いが暇潰しにはなりそうだな」
大剣を持つ男、サーツはむっつりとしていた表情が崩れ、口の端をニヤリと歪める。
「じゃあ、そっちの少年はアタシの相手だねぇ?というわけでピートは――」
「シークは逃げろ!」
ニズが言い終わるのを待たず、シークに向かって叫ぶ。
シークはそれに従おうとはせず、剣を抜こうとする。
だが、ジオはそれを手で止め、小声で話し掛ける。
「魔法の効力で奥はコイツらの後ろに繋がっているはずだ。だから、お前は後ろからコイツらを攻撃してくれ」
適当に言ったことなんだが、上手い言い訳だな。そう思いながらも、顔には出さない。
その理由にシークは納得したのか、鞘に納めたままの剣から手を離しながら振り返る。
そして、暗闇が続く遺跡の奥へと駆け出した。
「行っちゃったねぇ」
シークが逃げても自然体のままで、まったく焦っていないように見える。
いつでも捕まえることができる、そう考えているのだろう。
彼女らにはそう考えるだけの実力がある。
だからこそ、少しでも、1秒でも長く時間を稼がなければならない。
「さて、始めようか。騎士の少年よ」
その声と同時にジオは剣を構え、魔法を詠唱し始めた。
――――
最初のコメントを投稿しよう!