一章

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 暗闇にテンポの早い呼吸音が反響する。 「はぁ、はぁ……まだか?」  後ろを見ずに前だけを見て走り続ける。振り返る余裕がないためだ。 「まだ着かないのかよっ」  叫んだ瞬間、景色が変わった。場所が変わったわけではない。それまでの道とは違う、大きな部屋に出たのだった。 「何だよ、ここ……後ろに着くんじゃなかったのか?」  予想外の状況による混乱と過度の運動で思考能力が低下した状態で、辺りを見回しながら呟く。  見ている途中で部屋の中央に何か台座のような物があることに気付く。 「…………」  無言で近づく。  不思議な感覚を抱きながら、操られているように近付いていく。  気が付けば台座は目の前だった。同時に、台座の上の箱のような物が目に入った。  躊躇いもせず、その箱に手を伸ばした。  だが、その手が箱を開けたとき、ある音が聞こえた。 ――――カツカツカツ  来た。  そう思った。  嫌な予感が頭をよぎる。  足音はさっきと同じで3つ。1つではなく3つだ。  それが意味することは…… 「ここが最奥部か?」 「たた、多分、そうだと思いますっ」 「お宝は……あんまり無さそうだねぇ」  意味することは……ジオがやられたということ。  ジオはどうなった?そう考えていると、サーツが何かを背負っていることに気付く。  ジオだ。  一々運んでいるということは、多分殺していないのだろう。  そう思ったが、大事な解決策が思い浮かばない。 「で、少年はそんな所で何、突っ立ってるんだい?」
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