一章

10/14
前へ
/19ページ
次へ
 声を掛けてきた。  逃げ場はない。  戦うしかない。  勝ち目はあるか?  ジオが勝てなかった相手に勝てるわけがない。  どうすればいい、どうすれば…… 「おーい、聞こえてないのかい?」  思考の渦に呑まれかけていると、ニズが再び声を掛けてきた。  シークはハッと顔を上げる。  3人の盗賊は律儀にもシークが応答するのを待っていたようだ。 「聞こえてる。先に聞いておきたい。ジオは生きているのか?」  声が震えるかと思っていたがまともに話すことができた。  そして、確信を持ちたかったことについて質問した。 「アタシたちは盗賊だけど、殺人者じゃないさね。殺しはしないよ」  その答えをシークは何となく嘘ではないと感じた。  だから少し安堵し、ほっと溜め息を吐く。 「そんなことより、その箱はなんだい?」  少し緊張した風に問うニズ。何かを恐れているかのようだ。  それを見たシークは納得した。  彼女たちは優しさで待っていたのではなく、この少年が何かしらの武器を手に入れたのではないかと疑い、身構えていたのだ。 「この箱には指輪が入っていた」  自分が嘘を吐いたところですぐにバレるだろうと考え、見たままを言った。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加