一章

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 ニズは若干、拍子抜けしたような声で聞き返す。 「指輪?」  むっつりとした顔をしているサーツも少しだけぽかんとした顔になっている。 「ああ、指輪だ」  その問いに、もう一度同じことを言う。  すると、ニズたちは脱力したように肩を落とす。 「まあ、いいさ。取り敢えずその指輪とやらを貰おうか」  緊張が解けたニズは、ゆっくりと歩き出す。  シークとニズの間は徐々に縮まっていく。  その時―――― 【少年よ、共に堕ちよ】  その時、空から声が落ちてきた。  表現がおかしいとも思えるが、そう例えるしかないように声が聞こえてきた。 「声っ!?」  新手が来たのかと驚き、シークは上を見上げる。  だが、上には遺跡の天井があるだけで、他には何もない。  ニズはシークのその行動に呆気にとられている。  つまり、ニズには声が聞こえていないのだ。  聞こえているのはシークだけ。 【我を手に取れ、我と共に堕ちよ】  また、聞こえた。  しかし、今度は声と同時に後ろ――箱の方から強い気配を感じた。  そこには、黒く光っている指輪があった。 「…………」  さっきのようにまた、手を伸ばす。  その光には気付いたニズが全速力で駆けてくる。  だが、それよりも先に指輪を手に取り、指に填める。
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